一人でいることについて

大学に入って一人暮らしをしたら病んだ。3年生に上がって上京就職した彼氏と遠距離になった途端、家にひとがいない生活になってだめだった。わたしは一人がすきだと思って一匹狼を気取っていたけど、それは誰かといる時間が十分あった上でのことなんだと痛感した。

ちょうどやりたいことが地元であったので就職を機に実家に戻った。これで安泰、一人暮らしなんか一生してやるかと思った。

でも実家で9ヶ月暮らしたところで限界が来た。23にもなって、歯磨きせず寝落ちたことで親にあんなに言われると思わなかった。記憶がないほど酔っ払って帰宅しているのに歯なんて磨けるわけがない。

1年経とうとした頃には、自分の感性がしんでいることに気がついた。今日は何が食べたいか、どこに行こうかを真剣に考えなくなった。内省は自分の人間関係の不得手さについてばかりになり、自分自身の好きなところへの自覚が薄まった。文章もゆるく始めていた短歌も、練り上げるパワーがなかった。

 

結局わたしは一人きりの時間が必要なんだ。

でも今のままではだめなんだと思う。またきっと病む。

これからは一人でゆたかに暮らしつつ、きちんとふれ合いたい人たちに高い頻度で、自分からコンタクトを取っていく。
そろそろ話したいなーと思ってはいても、話そうよと自分から言うにはめんどくさくて、いつも関係性の継続を相手まかせにしていた。(だからわたしの長い友達は相当に図太いやつしか残っていない。)

どこまでできるかわからないし、結局めんどくせーってなって週末も一人で深夜ドラマを観ながらジャンクなものを食っている姿が目に浮かぶけれども、そうしてみようと初めてしっかり思ったのだった。

 

そして寝静まった実家の自室でこれをかいていると、先に寝た母の部屋から「だれの部屋の電気がついてるー」との声。どうでもいいだろ。無言でばしっと照明のスイッチをたたき、真っ暗になった部屋で続ける。PCが光っている。おかあさん、これでわたしの目が悪くなるのとどっちがいいわけ。

早く新しい部署決まれ。家を探したいのや。

20220208#刺さる短歌

『短歌ムックねむらない樹vol.5』2020年8月、書肆侃侃房より

 

子どものころ住んでた街のゆうぐれに立ち止まったら死ぬ気がするの

(上澄眠『苺の心臓』青磁社)

 

丸くなれば顔にしっぽが触るってどういう感じなのか知りたい

(兵庫ユカ「七月の心臓の栞」)

 

長生きのほどよい長さ あたためた牛乳にメガネをくもらせる

(牛尾今日子「冬と予報」)「京大短歌」22号

 

バーミヤンの桃ぱっかんと割れる夜あなたを殴れば店員がくる

(柴田葵『母の愛、僕のラブ』)